五箇繁善（ごか　しげよし）

(メサ構造バルク圧電デバイスの設計）

ATカット水晶振動子は，安定な周波数源として広く使用されており，その形状は小型化に適した方形ストリップが主流になっている．その設計課題の１つは輪郭振動との結合回避であり，特に厚みすべりと同じ変位成分を含むX-Y'厚み屈曲モード（TF）は厚みすべりモードに対し最も強く結合し，大きな特性の劣化をもたらす．したがって，良好な温度特性を得るためにはこのモードとの結合回避が不可欠である．この解決法の一つとして，強いエネルギー閉込め効果を持つメサ構造が利用でき，メサ構造が有するモード間結合抑圧効果により大きな特性改善が図れる．

（CPTを利用した超小型原子発振器に関する研究）

CPT（Coherent Population Trapping）というある条件下においてアルカリ元素の吸収線に細い線幅の透明化が起こる現象を用いると，光学装置のみで基準周波数源を取り出すことが可能である．共振器の必要がない構造は，超小型原子発振器に適している．現在，長期安定度改善と低消費電力化に関しての研究を行っている．

⁸⁵Rbに必要なマイクロ波周波数はCsの1/3，⁸⁷Rbの1/2以下の1.5GHzであり，マイクロ波発振器の簡素化と半分以下の消費電力が期待できる．加えて，周辺回路作製の容易化とレーザ選択性の向上によりコスト削減にも非常に有効である．⁸⁵Rbおよび同位体⁸⁷Rb両方を含むナチュラルRbガスセルを用い，レーザ変調周波数のみを可変することで⁸⁵Rb，⁸⁷Rb両方のCPT共鳴を観測できることを明らかにした．また，CPT原子発振器テストシステムを用いて長期周波数安定度を測定した結果は，１日あたりの平均安定度が4x10^-12以下で実現でき，使用したOCXOの特性（10^-10）を２５倍以上改善できることを明らかにした．